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昨年秋から新風書房で進めていた『孫たちへの証言・原爆編』の英語版が電子ブック化され、7月末、アマゾンのネットで世界へ配信された。端末はキンドルほかアンドロイドなどで受信できる。価格は5・99ドル。
これまで毎年出版された戦争体験本『孫たちへの証言』23集分から抽出されたのは65編。原爆編出版のお知らせを郵送したが、転居先不明や本人死亡などで、了解を得られたのは37人だった。翻訳は広島と長崎の「新英語教育研究会」グループの先生方が、ボランティアで引き受けてくださった。プルーフはカナダ人のポーリーン・ボールドウィンさんへお願いした。7月から新聞印刷制作部でデータ処理を行い、アマゾンのネットで世界へ配信した。
新風書房の福山代表は、「英語圏の国でどれだけアクセスされ、どのような反響が得られるか、興味津津です。特にアメリカは原爆投下の当事国であり、核使用を正当化する世論は強い。その人たちに〝核?は人類が抗し難い魔物であることを知ってもらいたい。核廃絶へののろしを上げる第一歩です」と決意を述べた。
NHK広島放送局は66年目の原爆の日を前に、8月1日夕方6時10分からのローカル番組で「原爆の思いを世界に」のタイトルで、新風書房の電子出版「ノーモア広島・長崎」の取り組みをリポートし、特集コーナーで紹介した。
新風書房が毎年、戦争体験を公募、発行している『孫たちへの証言』の第20集(平成19年8月発行)へ応募、入選し掲載された広島市の河内政子さんが登場した。爆心地から約400メートルの本川に住んでいて、広島第1高女から軍需工場へ行っていたが、6日は工場が休みになった。母から叔母のところへの使いを頼まれ、いやいや行く。そのため自分だけ助かった体験である。
新風書房が河内さんほか37名の体験を英訳し、ネットで世界へ配信したことを伝えた。読みたい人は、どこからでも自分の端末にダウンロードして読むことができるというわけ。
新風書房の取材では、製作現場にカメラを持ち込み、担当者に密着取材していた。
福山代表はインタビューで①自分史教室をやっていて、戦争が一番ドラマチックなので文集として作った。②第3集から原稿を公募に切り替えた。③戦後65年を機に原爆体験だけを抽出し英文に翻訳し、電子ブックで世界へ配信することにした。④翻訳作業にはボランティアで、「新英研グループ」の皆さんが協力してくださったこと。⑤唯一の被爆国である日本は原爆の正体を世界へ発信する義務があることなどを、熱く語った。
応募403編から選ばれた7編から5つを選んだ。大賞は小野正之さん(千葉県流山市・68)の『鉄の時代を生きて』。八幡製鉄に入社し高炉の生き神様といわれる田中熊吉翁と出会う。歴史を織り込みながら自分をからませていく。君津赴任を経てドイツ駐在、帰国後も輸出部署で順調に昇進する。だが昭和63年、高2の次男がバイク事故で車椅子生活に。海外勤務をあきらめ社会復帰の応援を決意する。やがて身障者国体で銀メダル。職場も得て家庭も築く。
佳作は『ドナウ漂流』の北山青史さん(山形県上山市・61)と『父を恋う』の藍友紀さん(神奈川県厚木市・81)。北九州特別賞は『故郷』の阿部敏弘さん(浜松市・61)。
審査員柴田翔氏の講評に「選者としての選考の対象は、あくまでも、自分史文学の作品であって、決して応募者の人生ではないということも、自戒の念とともに思い出す」とある。この賞に「文学」の表現が植え込まれている重要なカギがある。単なる自分史であっても、それが文学的領域まで高められているかが問われていると思う。「北九州自分史文学賞」は単なる「自分史大賞」ではない。(F)
今年度第22回の募集は9月30日まで。問合せ093―582―2391。